不妊治療 Reproduction
卵巣刺激
卵巣にはたくさんの卵細胞があり、平均して月に一つずつ成熟し卵子となって排卵されます。卵細胞は卵胞という袋に包まれていて、発育するにつれてこの袋が大きくなっていき、およそ20mmになると破裂して、卵胞の中の液体とともに卵子が排卵されます。
排卵誘発は卵胞を複数発育させ、複数の良質な卵子を得る目的で行われます。排卵誘発方法はさまざまあり、高刺激な方法(調節刺激法)から低刺激な方法、あるいはあえて誘発せずに自然に発育した卵子を得る方法もあります。患者様お一人おひとりの状態に合わせて方法を決定します。
当クリニックでは以下の方法で採卵の準備を行います。
自然周期法
排卵誘発剤を使用せず、自然に発育した卵子を採卵する方法です。排卵誘発剤を使用しないため体への負担が少なく、採卵1回あたりの費用も低くなりますが、採卵個数が0〜1個となるため結果的に採卵回数がより多く必要になってきます。
低〜中刺激法
方法はさまざまありますが、代表的な方法を示します。
クロミフェン法
クロミフェン(クロミッド®など)を月経3日目前後より内服します。
下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体化ホルモン(LH)は、卵巣に働きかけて卵胞を育て、排卵させる作用を持ちます。 クロミフェンは、視床下部に働きかけて結果的にFSHとLHの分泌を促すことで排卵誘発作用を発揮する内服剤であり、一般不妊治療でも広く使用されています。 排卵誘発作用は、それほど強くないため、hMG製剤のように多数の卵胞は発育しませんが、高齢の方やhMG製剤が効かない低反応の方においても効果が期待されます。 副作用としては、服用時の卵巣の軽い痛みやお腹の張り、時に頭痛や霧視(物がかすんで見える)などがあります。
クロミフェン+hMG法
クロミフェンを月経3日目前後より内服し、さらにhMG注射を加えることで卵巣を刺激して、クロミフェン法より多くの成熟卵を得ようとする方法です。クロミフェンは間接的に卵巣を刺激するのに対し、hMG注射は直接卵巣を刺激し卵胞を発育させます。
調整卵巣刺激法(高刺激法)
方法はさまざまありますが、代表的な方法を示します。
GnRHアゴニス-ロング法
採卵周期前の高温期中期より採卵前までGnRHアゴニスト点鼻薬(ブセレキュア®など)を連日使用します。この点鼻薬は卵子が採卵前に排卵してしまうことを防ぎます。月経3日目頃よりFSH・hMG製剤(注射)を連日投与して卵巣を刺激します。卵胞の大きさを計測し、ホルモン値等と考慮して採卵日を決定します。採卵の2日前に排卵を促す(卵胞内の卵子を成熟させる)ためのhCG製剤(注射)を投与して採卵を行います。
GnRHアゴニス-ショート法
月経開始3日目ごろから採卵前までGnRHアゴニスト点鼻薬を使用します。月経3日目頃よりFSH・hMG製剤(注射)を投与して卵巣を刺激します。卵胞の大きさを計測し、ホルモン値等と考慮して採卵日を決定します。採卵の2日前に排卵を促す(卵胞内の卵子を成熟させる)ためのhCG製剤(注射)を投与して採卵を行います。
GnRHアンタゴニスト法
月経3日目頃よりクロミフェンを内服し、その後FSH・hMG製剤(注射)を投与する場合と、月経3日目頃よりFSH・hMG製剤(注射)を投与して卵巣を刺激する場合があります。いずれの場合も最大卵胞径が14mm程度を超えた時点からGnRHアンタゴニスト(セトロタイド®など)製剤(注射)を連日併用して排卵を抑制します。卵胞の大きさを計測し、ホルモン値等と考慮して採卵日を決定します。採卵の2日前に排卵を促す(卵胞内の卵子を成熟させる)目的にGnRHアゴニスト点鼻薬(ブセレキュア®など)もしくはhCG製剤(注射)を投与して採卵を行います。
※ GnRHアンタゴニスト製剤の排卵抑制作用は、GnRHアゴニスト製剤に比べ速効性があり、使用期間も短く済みます。海外ではアゴニストに比べて卵子の質が改善したとの報告もあり、妊娠率の改善が期待されています。また、自然周期やクロミッド周期でも使用できます。